ダウン症児の嚥下時舌挺出

先日、Twitterで貴重なご意見・ご質問を頂きました!

今回は、この「舌が出たまま口唇を閉じずに飲み込む」という嚥下のことを解説したいと思います。

!ツイートの掲載に関してはご本人の承諾を得ています!

ダウン症のお子さんは、食事を飲み込む時に舌を出したままゴックンとすることがあります。

これを舌挺出嚥下や舌突出嚥下といったりしますが、今回は舌挺出(ぜつていしゅつ)嚥下と呼ぶことにします。

ダウン症児お子さんの場合には、

① 年齢が上がることで舌挺出嚥下の頻度は少なくなる

② 舌挺出嚥下の減少には、粗大運動発達と口腔機能の発達が影響を与えている可能性が高い

③ 食べる食品の種類によって、舌挺出が出やすかったり、出にくかったりする

といった特徴がありそうです。

それでは、ダウン症児の舌挺出嚥下について解説していきます

Twitter(@hagukumichild

ダウン症児が離乳食を食べる時に舌が出てくる

ダウン症児の食事の問題として、丸飲み舌挺出嚥下乳幼児期全般にわたってみられやすい異常性として、昔から報告されています(例えば、Gisel et al., 1984)。

また、ダウン症児の乳児期は誤嚥の危険性が高いことも報告されているため(Jackson et al., 2016)、異常な飲み込みである舌挺出嚥下は可能な限り修正していったほうが良いと考えられています。

では、この舌挺出嚥下はどのような経過をとりやすいのでしょうか?

日本のダウン症児の摂食機能・口腔機能を調査した研究を概観すると、年齢が上がることで徐々に舌挺出嚥下の頻度は少なくなる場合が多いようです。

そして、今のところ、年齢が上がり、運動発達が進むことが、口腔機能の発達につながり、舌挺出嚥下を抑制していくことにつながるのではないかと考えられているようです。

例えば、中島ら(2012)は2名、中村ら(2017)は4名のダウン症児を数年間にわたって観察し、摂食機能と粗大運動の発達の関連が強いのではないかと考察しています。

さらに、中村らは別の研究(2017)で、38名のダウン症児を調査し、運動・認知・言語それぞれの発達と摂食機能を比べましたが、やはり粗大運動の発達が摂食機能との関連が強かったとしています。

そして、四つ這い以降の運動発達が獲得されると、舌挺出嚥下の頻度が少なくなってくることが多いようです。

舌挺出嚥下は、あかちゃんが吸啜で哺乳をするときの舌の動きが大きくなっても癖として残っているため起こると解釈されることがあります。

高橋ら(2015)では、早期に摂食指導を提供できたダウン症児では、機能を早く獲得できたとも報告されており、早期療育の重要性を示すものかと思います。

運動が発達し、咀嚼を獲得するほど口腔機能が育つと、あかちゃんの飲み込み方である舌挺出嚥下は、大人の嚥下へと置き換わっていくのかもしれません。

ただし、舌挺出嚥下が完全になくなるというよりは、頻度が少なくなるものの、ある程度残ってくる子が多いようにも感じます。

例えば、咀嚼を獲得した子では、固形物を咀嚼して食べる時には舌挺出嚥下が目立たないのに、ヨーグルトのような水分が多い食べ物では舌挺出嚥下が目立つお子さんも一定数います。

または、飛んだら跳ねたりできるようになっても、舌を出した嚥下がメインのお子さんもいます。

どのように考えて対応すべきなんでしょうか?

舌を出した飲み込みへの対応

粗大運動発達が進み、咀嚼が獲得されるほど口腔運動が育つと、舌挺出嚥下は少なくなることが多いです。

そのため、小さい頃はまずは発達を待ちつつ、お子さんの口腔機能に合わせた食べ物の固さに工夫しながら、咀嚼の獲得に向けて練習をしていくことが方針となることが多いです。

すなわち、離乳の発達段階を参考に、捕食、押しつぶし、咀嚼を丁寧に獲得させていきます。

では、上記のように咀嚼獲得後も食品によって舌挺出嚥下の出現のしやすさが異なるお子さんの場合には、どのように大人の嚥下を教えていけばよいのでしょうか?

まずは、お子さんの口元をよく観察して、どういう種類の食べ物だと舌挺出嚥下となりにくいのかを把握しましょう。

舌挺出嚥下となりやすい/なりにくい食品の種類が分かったら、日常の中で舌挺出嚥下となりにくい食品を多めに食卓に出して、正しい嚥下をより多く経験させてみます。

良い嚥下をたくさん経験させて、良い嚥下をその子の中で定着させていくようなイメージです。

大事なことなので繰り返します!

咀嚼を獲得していないお子さんに固形物を与えることは避けてくださいね。

窒息事故の危険性があります。

仮に、「咀嚼を獲得していないけど、固形物の方が舌挺出嚥下が出にくい」という印象を持ったとしても、それはおそらく丸飲み無理な飲み込み方になっている場合が多いです。

丸飲みや無理な飲み込み方を続けると癖がついてしまうこともありますので、おすすめできません。

お子さんの摂食について、相談できる場がある方は、まずは口腔機能の評価を専門職にしてもらい、どのくらいの食品が安全で良い機能を引き出せるのかを確認できると良いと思います。

まとめ

ダウン症児のお子さんでは、

✔ 年齢が上がることで舌挺出嚥下の頻度は少なくなる

✔ 舌挺出嚥下の減少には、粗大運動発達と口腔機能の発達が影響を与えている可能性が高い

✔ 食べる食品の種類によって、舌挺出が出やすかったり、出にくかったりする

といった特徴があるようです。

ただし、今回ご紹介したどの研究でも、個人差が大きいことが示されています。

結局は、お子さんひとりひとりの様子を丁寧に観察して、ご家族の意向・希望を踏まえながら方針たてをしていくことになるかと思います。

今回お伝えした内容が全てではなく、考え方・指導方法の1つとしてとらえていただけると助かります。

摂食嚥下の支援はかなり個別性が高い分野です。

加えて、お子さんによっては誤嚥、窒息などとも隣り合わせの場合があり、命に直結する活動の1つです。

信頼できる専門職とともに、一歩ずつ進めていけると安心です。

今回の記事が、お子さんの摂食機能の獲得について、前向きに相談できるきっかけとなれましたらうれしいです。

お食事中の姿勢は、おくちの機能に影響を与えます。

良い姿勢で食事を楽しむためにも、椅子選びは重要です。

椅子選びについての、こちらの記事もお読みください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA