先日、以下のようなご相談がありました。
現在、3歳になりますが意味のある発語がありません。質問にうなづいたり、首を振ったりして「Yes or No」を伝えることができ、周囲の言っていることは分かっているようです。また、自分の要求は指差しなどで伝えています。親としても、小さい頃からたくさん声かけをしてきたつもりですが、なかなか言葉が出ないと「親の関わりが悪かったのだろうか…」と悩んでしまいます。
子どもたちの中には、ことばを理解する力が育っても、なかなかお話が出てこない子がいます。
今回は、上記のような子へのアドバイスを書いてみようと思います。
自分の意思を相手に伝える手段を増やそう

ことば以外の手段であっても、相手に意志を伝える経験は大切です。そして、その経験はことばにつながっていきます。
親の関わりのせいではないと思う
まず、相談者さんの場合には、お子さんのことを想っていることが相談内容からもよく感じられます。
育て方のせいではないと思う。
たまたま、うまれつきの特徴・特性のため、通常よりも少し丁寧な関わりや育て方が必要な子だったのかもしれません。
まずは、「親の関わりが悪かったからだろうか…」と考えるのをやめて、どこに手をかけてあげる必要がある子なのかを考えてみましょう。
ことばで話せるようになる前にも、意思表出はある
子どもたちは、ことばで話せるようになる前にも、何かしらの手段で意思表出をしています。
- 泣き声
- 表情
- 指差し
- 身振り
- 発声
など。他の手段をつかう子もいるかもしれません。
実は、こういった手段を広げておくことが、ことばの発達には重要です。
赤ちゃんの頃は、泣いたり、笑ったりしながら、大人に気持ちを伝えますよね。
そして、成長に伴って、意思伝達の手段は増えて、指差しで伝えられるようになったり、身振りで表現したりするようになります。
身振りというとピンとこないかもですが、『抱っこ』を要求するときに両手をひろげて待っているのも身振りのひとつです。
泣き声・表情→指差し・身振り→ことば
こんな感じで、成長にともなって段階的にことばにつながっていく場合が多いです。
おそらく、相談者さんのお子さんは『指差し・身振り』の段階にいるのでは?と思います。
そうであれば、まずは身振りでの伝達手段を広げてあげれば、ことばにつながっていくかもしれません。
身振りでの伝達を伸ばしてみよう
子どもの身振りでの伝達を育てるためには、以下が大切です。
- 大人が身振りをつかって関わる
- 毎日経験するもの、簡単な動きのものから
順番に解説しますね。
当たり前ですが、子どもに「身振りで表現しなさい」といってもできるわけがありませんよね。
まずは、大人が生活の中で身振りを使って関わってみましょう。

「でもさ、身振りってどうしたらいいの?」
両腕を左右に広げて「ぶーん」と飛行機の真似をしたり、手を頭にあてて「帽子、かぶろうか」と声かけをする感じでOKです。
とはいえ、生活の中では身振りで表現しにくいものも多いと思うので、手話を参考にするのも良いと思います。
実は、手話の中には、手の動きから意味が推測しやすいものがたくさんあります(例:みかん→手で皮をむくような動き)。
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最初は、毎日の生活の中で経験することから、身振りをつけてみましょう。
例えば、以下のような場面。
- 食べる
- 飲む
- みがく(歯磨き)
- 洗う
など。繰り返し経験するので覚えやすいですし、身振りの動き自体も簡単なので子どもでも表現しやすいです。
身振り・ジェスチャーについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、お読みください。

「ポン」「シュー」「トントン」などの擬音語・擬態語は、子どもにとって言いやすく、覚えやすいことばです。
生活の中で身振りをたくさん見せつつ、擬音語や擬態語での声かけの頻度も増やしてみましょう。
子どもの行動をナレーターのように実況中継する
子どもが遊んでいるときに、「ギュー」「ガタンゴトン」「ビューン」など、子どもの動作に合わせて声かけしてあげるのもオススメです。
自分がやっている動作がことばとして聞こえてくるので、覚えやすくなります。
ことばの「理解」が発語の土台となる

ことばで言えるようになるためには、ことばを「理解」できることも大切です。
ことばに反応しているようで、実は状況から理解している場合も
相談者さんのお子さんの場合には、ある程度ことばを理解できているのかもしれません。
しかし、中にはことばを理解しているように見えて、実は周囲の状況から判断している子もいたりします。
例えば、丸めた紙くずを渡されて「weggooien」と声かけられたら、あなたはどうしますか?言われたことばの意味が分からなくても、「捨てるのかな?」と判断しませんか?
視覚的な情報で判断していることも多い
案外、僕らはことば以外の情報で判断していることって多いです。
あなたは外国人に冷蔵庫の前で牛乳と水を交互に指さしながら「Wil je een glas melk?」と言われたら、ことばが分からなくても「どっちを飲みたい?」って聞かれていると推測できるのではないでしょうか。
もし、子どもが上記のように状況の理解に頼っているようなら、まずはことばの理解を育てることが大切です。
ことばの発達は「理解が先」
子どもたちは、理解できるようになったことばから、少しずつ言えるようになります。要するに、ことばが理解できていないと、なかなか話せるようにはなりません。
そのため、もしもことばの理解が不十分な場合には、まずは理解を伸ばすことが重要です。
このあたりの話題は、以下の記事で詳しく解説しています。

お買い物ごっこは、ことばの理解を確かめやすい遊びのひとつです。
例えば、「りんご」「くるま」「たいこ」など、家にあるおもちゃを机の上に並べて、「〇〇ください」と子どもにお願いしてみましょう。
言われたことばが分かれば、正しいものを受け渡してくれると思います。
もし、ことばだけで理解できなければ、上記で紹介したような身振りや擬音語・擬態語で伝えてあげると理解しやすくなります。
発語を引き出すためにも「理解」は大切
「なかなかことばで話せるようにならない…」と心配するとき、『言えることば』に注目しやすいですが、『理解できることば』が増えていることも大切です。
繰り返しになりますが、理解できることばを土台に、言えることばが育ちます。
理解を広げていくための関わりについては、以下の記事でも紹介しています。

上記のように、状況の理解が優れていると、耳が聞こえにくかったとしても周囲から気づかれにくい場合があります。
ことばの発達が気になる場合には、念のため聴力検査を実施しておくことをオススメします。

まとめ:理解を育てつつ、表現手段をふやす
この記事では『ことばは理解できるのに、なかなか話せるようにならない』といった子への関わりについて解説しました。
ここまでをまとめます。
- ことば以外の意思伝達の手段を広げることも重要
- 身振りや擬音語・擬態語を使った関わりをしよう
- ことばの理解を確認しておくことも大切
こんな感じでしょうか。
まずは、意思を伝える手段のバリエーションを広げてみましょう。そのために、生活の中で大人が身振りや擬音語・擬態語をたくさんつかって関わってあげてほしいと思います。
以下の記事では、幼児期のことばの発達について解説しています。併せてお読みいただけると、子育てのヒントになる情報があるかもしれません。
