
この記事を書いた僕は、言語聴覚士としてことばの発達に心配のある子や保護者を支援しています。
先日、以下のようなご相談をうけました。
もうすぐ2歳になる子ですが、質問に対してオウム返しをすることが多くて心配です。ネットで調べると「自閉症」「発達障害」とか出てきてビックリします。オウム返しをなくすには、どうしたらいいのでしょうか?
上記のようなご相談は、わりとよくお聞きします。
結論からいうと「ことばが発達するにつれて、オウム返しは減ってくる子が多い」です。
今回の記事では、発達障害の有無というより、ことばの発達とオウム返しの関連について解説していこうと思います。
オウム返しは、いつまで続くのか?



子どものコミュニケーションが育つにつれて、オウム返しは徐々に少なくなっていく場合が多いです。
オウム返しには2種類ある
まず、オウム返しとは何か?ということを解説します。
オウム返しはエコラリアともよばれることがあり、次の2種類があります。
- その場でのオウム返し(即時エコラリア)
- 過去に聞いた内容のオウム返し(遅延エコラリア)
それぞれ、例をあげますね。
・大人「楽しかった?」→子ども「楽しかった」
・大人「これなに?」→子ども「これなに」
こんな感じで、大人が言ったことばを、すぐに復唱します。
・CMのフレーズを関係ないときに言う
・前に親が言ったセリフを後日に言う
など。聞いたことばを、時間をおいて繰り返していいます。
本人なりには意味がある場合もありますが、周囲からは状況に無関係に言っているように見えることも多いです。
子どもがオウム返しをする理由
子どもがオウム返しをするのは、以下の理由が多いように思います。
- 相手の言っていることが理解できない
- どうやって返答すればいいか分からない
子どもにしてみれば「よく分からないから、繰り返して言っている」という状態。でも、実は僕たち大人でも、似たような状況ではオウム返しをすることが多いんです。
たとえば、相手が話している外国語が分からないとき、無意識にも言葉を繰り返してしまいませんか?
それと似たような感じで、子どももオウム返しをしているときには、困っているのかもしれません。
時々、「オウム返し=自閉スペクトラム症」と短絡的に結び付けてしまう人がいますが、これは少し飛躍しすぎです。
自閉スペクトラム症をもつ子にオウム返しが多いのは知られていますが、オウム返しがあるだけで自閉スペクトラム症とは診断できません。
通常の発達をしている子でも、2~3歳くらいまではオウム返しの頻度は多いです。
オウム返しをしながら、ことばを学ぶ側面もある
相手のことばをよく聞いて、模倣できるようになったからこそ、オウム返しができるわけです。
そして、模倣しながらことばを学ぶ。一概にオウム返しは悪者ではない、と言えるのではないでしょうか。
オウム返しはコミュニケーションが育てば解消する
「相手の言っている内容が分からない」などのコミュニケーション上の未熟さからオウム返しをしているのなら、ことばが発達することで解消していきます。
オウム返しではなく、ちゃんと答えるようになる
ことばが育ち、やりとりの力がついてくれば、自然とオウム返しの頻度は減ってくる子が多いです。
オウム返しだけに注目するのではなく、ことばの発達を全体的に育てるような広い視点に立てると良いかもしれません。
オウム返しには、どのように対応すべきなのか?



オウム返しの意図を言語化しつつ、伝わりやすい表現に誘導していきましょう。
オウム返しを受け止めるマインド
「自分の伝え方で、子どもが理解できただろうか?」
このように考えてあげると、支援につなげやすいと思います。
伝えた内容について、子どもが理解できているかを考えてみましょう。
オウム返しで答えた場合には、伝え方を工夫する必要があるかもしれません。例えば、ことばだけではなく、実際にやってみせながら伝えるなど。
「なんで分からないの?」「ちゃんと答えて!」と子ども側に責任を押し付ける前に、伝わりやすい伝え方ができているかどうかを考えていけると良いと思います。
オウム返しへの支援を考えるときには、まず、子どもが言われていることを理解できているかどうかを確認することが大切。
この頃の子どもの多くは、ことばの理解力が不十分なことも多いです。
イラストやデモンストレーションなどの視覚的な情報を併用しながら伝えてあげると、分かりやすい指示になるかもしれません。
オウム返しからことばの発達につなげる方法
以下の2つが重要だと思います。
- 言い方のインプット
- 意思のアウトプット
それぞれ解説します。
相手にどのように言ったら伝わりやすいのか?といったモデルを聞かせてあげると良いと思います。
これには、生活の中で本人がやっていること、感じている気持ちなどを積極的に言語化しながら関わってあげることがオススメ。
例えば、以下のような感じ。
- 「転がしてるんだね!」
- 「おなか空いたね」
- 「疲れちゃったね」
このような声かけを聞きながら『自分がやっていること・感じている気持ちは、そうやって表現すればいいのか!』という気づきをあたえられます。
自分の想いを相手に伝える経験も大切です。例えば、飲み物を選んでもらう場面で…。
・「何か飲む?」→「何か飲む」
とオウム返しになってしまうなら、「牛乳」と「お茶」の選択肢を見せながら選んでもらうと良いかも。
ことばで伝えることにこだわりすぎず、自分の意思をしっかりと伝える経験を積んでおくことも、その後のコミュニケーションの発達に活きてきます。
まとめ:コミュニケーションを育てよう
というわけで、今回はここまで。
最後に、この記事をまとめます。
- オウム返しはコミュニケーションが育てば減少する
- 子どもが理解しやすい伝え方を工夫するのが大切
- 言い方のインプット、意思のアウトプットが大事
こんな感じでしょうか。
基本的には、発達の未熟さゆえにオウム返しが出ている場合が多いと思います。
子どもの発達の状態に合わせた関わりを、生活の中で続けていくことが大切。
オウム返しが気になって調べ始めると「自閉スペクトラム症」や「発達障害」などのワードが出てきて、心配になっている人もいるかもしれません。
診断に関しては、療育センターなどの医療機関に受診して、実際に専門家にみてもらいながら、相談していけると良いかもしれません。