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【レビュー】「赤ちゃんの心はどのように育つのか」から学んだこと

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赤ちゃんの心はどのように育つのかー社会性とことばの発達を科学するー(著:今福理博)を読みました。

この本から学んだこと・感じたことをレビューします。

著者の今福先生より、本記事へのコメントをTwitterで頂きました!

明和政子氏(京都大学大学院教授)推薦!

「ことばを聞く・話す力はどのように発達するの?」「社会性やことばの発達を支える環境とは?」「これからの子育てや教育で重要なこととは?」
「科学」で解き明かす、子どもの心を育むために大切なこと

発達心理学・発達科学研究から探る、
“社会性とことばの発達”をめぐる最新トピックが一冊に!

最新の発達心理学・発達科学研究が解き明かす、社会性とことばの発達のしくみとは。

「社会性やことばの発達にはどのような環境が重要となるのか?」「ことばを聞く・話す力はどのように発達するのか?」「神経発達症(発達障害)の子どもの心の育ちとは?」

「これからの子育て・教育で大切なこととは?」など、現代社会で注目されるさまざまなテーマを含め、心の育ちをめぐる最前線を科学的にわかりやすく紹介。明日からの子育て・保育・教育にいかせるトピックが満載。

ミネルヴァ書房ホームページより

著者:今福理博 先生について

今福先生@masapon1009は武蔵野大学 教育学部 幼児教育学科の准教授をされています。

毎年のように海外誌に論文を掲載されており、発達科学や発達心理学の分野での研究実績も豊富な先生です。

そんな今福先生が、子どもたちの社会性とことばの発達の仕組みを解説する書籍を2019年に出版しました。

言語聴覚士として子どもたちに関わる僕にとって、非常に示唆に富む書籍でしたので、ご紹介します。

「赤ちゃんの心はどのように育つのか」レビュー

この書籍は、以下の5章で構成されています。

国内外の数多くの文献をレビューしながら解説されており、根拠に基づいた信頼性の高い内容になっていました。

  • 第1章 心の発達を科学する
  • 第2章 社会性の成り立ち
  • 第3章 ことばの発達
  • 第4章 なぜ子育て環境が心の発達に大切なのか
  • 第5章 心の発達から現代社会を考える

さっそく、各章別に学んだこと・感想を書いていきます。

心の発達を科学する

この章では、心の発達を学ぶ意義について、述べられています。

「心の発達について理解できれば、適切なかかわりができるようになり、子育ての不安が安心に変わります。(p.2より引用)」ということばに共感しました。

  1. 心の発達を理解する
  2. 心のはじまり
  3. なぜ赤ちゃんはかわいいのか
  4. ヒトらしい子育てのあり方
  5. 赤ちゃんの心を研究する
  6. 脳と心の関係

赤ちゃんは産まれながら「かわいがられる力」をもって産まれてくること、人の顔や母親の声といった社会的な刺激を好むことなどが、どのような研究手法によって明らかにされてきているのかが解説されています。

この章で解説されていることは、第2章以降でさらに深堀りして解説されています。

社会性の成り立ち

この章では、社会性の発達について詳細に解説されています。

「ヒトの社会性の発達とその個人差(多様性)を理解して、子どもたち一人ひとりに適切な環境とは何かを考えていく必要があります。(p.60より)」ということばに共感しました。

  1. 社会性と脳
  2. 社会性にかかわる認知の発達
  3. 相手を模倣することの発達
  4. 感情の発達
  5. 感情は身体に根差す
  6. 共感する心
  7. 他人のために行動する
  8. 社会性と神経発達症(発達障害)
  9. 社会性に関わるホルモン
  10. 注意と社会性の関係

近年提唱された社会的認知発達の理論である「ナチュラル・ペダゴジー(Csibra & Gergely, 2009, 2011)」を紹介されていました。このナチュラル・ペダゴジー理論については、「乳児期における社会的学習(著:奥村優子)」でも分かりやすく解説されているので、併せて読むと理解が深まると思います。

この理論では、赤ちゃんは顕示的シグナルと呼ばれる養育者からのアイコンタクトやマザーリーズなど知覚することで、「これから学習がはじまるぞ」ということを予期するとしています。

すなわち、養育者が出す社会的な刺激が赤ちゃんの注意を惹きつけて、社会性の発達に必要な学習を促進する可能性があるということです。言語・コミュニケーション支援で言語聴覚士が昔から大切にしている「アイコンタクト」「共同注意」「マザーリーズ」などを科学的な効果検証が進んできていることを知って、自分のセラピーに少し自信が持てました。

この章では、赤ちゃんが持つ驚くべき能力の数々が紹介されており、発達の奥深さ・おもしろさを再認識するきっかけとなり、この本を読んだ後に「発達科学」をキーワードに文献をたくさん集めました。

ことばの発達

この章では、ことばの発達の土台となる力について、詳細に解説されています。

「大人の語りかけは、赤ちゃんがことばを学ぶ環境になるのです(p.94より)」ということばが印象的でした。私たち大人自身も子どもたちにとっては学習環境のひとつになるということを改めて考えました。

  1. 胎児は音を聞き分けている
  2. ことばを聞く能力の発達
  3. ことばを話す能力の発達
  4. 口の動きを利用してことばを理解する
  5. ことばは人とのかかわりの中で育つ
  6. 赤ちゃんと「会話」する
  7. 赤ちゃんに歌いかける
  8. 赤ちゃんに語りかける養育者の脳

この章の途中では、著者の今福先生の研究結果も紹介されていました。

今福先生たちは、母音の音声模倣が可能な6カ月児を対象に、話者の口に対する注視行動と、母音の音声を模倣する頻度との関係を調査しました。その結果、話者の口に注目していた赤ちゃんほど、よく音声模倣をしていたとのことです(Imafuku et al., 2019)。

この研究結果は、私自身の育児経験の中でも納得のいくものでした。ちょうど生後6か月ごろ、向かい合って話しかけると、じっと親の口を何やら珍しいものでも見るように注視する時期がありました。実は、そのころは「なんか視線が合いにくくなったな」と心配もしていたのですが、しばらくすると音声模倣が活発になり、再度アイコンタクトも増えてきました。

この時期には大人は少し口の動きを誇張して見せてあげるなどの関わりが良いのかもしれません。

なぜ子育て環境が心の発達に大切なのか

この章では、子どもを取り巻く環境が、子どもたちの発達にどのように影響を与えるのかを多くの文献からまとめています。

  1. 胎児期の環境と発達
  2. 産後うつが赤ちゃんの発達に及ぼす影響
  3. 産後の赤ちゃんと社会性の発達
  4. 早産の赤ちゃんとことばの発達
  5. 早産の赤ちゃんのリスク要因
  6. ディベロップメンタルケア

この章では、早産児が経験する過酷な環境に対して、近年の研究結果や技術進歩が与える子どもたちの発達への影響を解説しています。

その中で、「口の動き(視覚情報)」と「音声(聴覚情報)」といった発話に関する視聴覚情報を統合して処理する力が、満期産児と早産児で異なるという研究結果は衝撃でした(Imafuku et al., 2019)。

発話の視聴覚情報の統合処理の力は、その後の理解語いとの関連が示されたことからも、私たち言語聴覚士が積極的にこの事実を学び臨床に落とし込む努力をすべき内容だと感じました。

心の発達から現代社会を考える

この章では、第4章までの内容を踏まえた上で、現在の子どもたちを取り巻く社会の環境と心のそだちについて解説しています。

著者も指摘しているように、赤ちゃんや子どもに関する様々なニュースが毎週のように飛び込んできます。

これらの問題にどのように私たちは対処していくべきなのかということを、心の発達といいう視座から考えることの大切さを感じました。

  1. 乳幼児教育と発達科学
  2. 現代の学校・家庭が抱える課題
  3. デジタルメディアと子育て
  4. これからの子育てで大切なこと
  5. 子どもが幸福感を得るために
  6. 心の発達を理解してかかわる

子どもが幸福感を得るためには、保護者や保育者の幸福感をあげる取り組みが必要だとする著者の提案には何度もうなづきながら読みました。

発達障害をもつ子を育てる保護者や保育者は、人一倍の労力を強いられていることが多いです。子どもを取り巻く環境のひとつである大人たちが、育児幸福感をもちながら子どもと関われるような助言や支援を私たち支援者は考えていかないといけないと強く感じました。

まとめ:「赤ちゃんの心はどのように育つのか」の書評・感想

本記事では、今福理博先生の「あかちゃんの心はどのように育つのか―社会性とことばの発達を科学する―」について書きました。

この書籍は、子どもの発達を支援する立場の方に、ぜひ読んでほしい本だと感じました。

発達科学・発達心理学の最前線で研究をされている先生だからこその、根拠・客観性の高い内容になっていると思います。

内容が少し専門的ですが、具体例も多く、基礎知識がない方でも読みやすいと思います。

発達心理学について学んだことがある人であれば、学びはより深くなるのではないかと思います。

読み終わった次の日からの子育て・保育・教育・療育・リハビリテーションに活かせる内容が盛りだくさんだと思います。

この手の本で2,200円+税という価格帯は安く、購入しやすい価格も魅力のひとつです。

本当に、買ってよかったと思いますし、今後も読み返しながら学びを深めたい本でした。