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さかさことばゲーム

お子さんが「りんご」を「ごんり」と言ったり、「くるま」を「まるく」と言ったり、ことばをさかさまにして遊んでいるのを聞いたことはありませんか?

「また変なこと言ってるわ」なんて、思わず笑ってしまう可愛らしい言い間違い。実はこれ、お子さんのことばの発達が順調に進んでいる、とても重要なサインかもしれません。

この「ことばをさかさまにして言う力」、専門的には「単語逆唱(たんごぎゃくしょう)」と呼ばれます。今回は、この単語逆唱が、お子さんのことばの発達、特に「音」を操る力において、なぜ大切なのかをお話ししたいと思います。

「音」を意識する力(音韻意識)の育ち

私たち大人は、りんごの絵を見れば、自然と「り・ん・ご」という3つの音のまとまりとしてことばを認識しています。そして、ひらがなの「り」「ん」「ご」という文字と、それぞれの音を結びつけて読むことができます。

このように、ことばを「意味」としてだけでなく、「音」の集まりとして捉える力のことを音韻意識(おんいんいしき)と呼びます。この力は、ことばを話し始めるときだけでなく、ひらがなを覚えたり、本を読んだり、文章を書いたりといった、今後の学習の土台となる非常に重要なスキルです。

音韻意識には、いくつかの発達段階があります。

  • しりとりができる: ことばの最後の音に気づく力
  • 「りんご」と「りす」が同じ「り」の音で始まるとわかる: ことばの最初の音に気づく力
  • ことばを音の数で数えられる(「さかな」→「さ・か・な」で3つ): ことばを音の単位(拍)に分解する力

そして、これらが進んだ先にあるのが、今回テーマの単語逆唱なのです。

単語逆唱は、高度な音のパズル!

「りんご」を「ごんり」と逆さまにする。一見すると単純な遊びのようですが、お子さんの頭の中では、実はこんなに高度な処理が行われています。

  1. ことばを音に分解する: まず、「りんご」ということばを聞いて、「り」「ん」「ご」という3つの音に分解します。
  2. 音の順番を記憶する: 分解した「り」「ん」「ご」という音の順番を、一時的に頭の中に記憶しておきます(これをワーキングメモリと言います)。
  3. 音を逆順に並べ替える: 記憶した音の順番を、今度は「ご」「ん」「り」と逆さまに並べ替えます。
  4. 並べ替えた音をことばとして発音する: 最後に、「ごんり」と一つのことばとして口に出します。

いかがでしょうか?単語逆唱は、ことばの音を一つひとつ正確に捉え、記憶し、自由自在に並べ替えるという、まるで音のパズルを解くような複雑な能力が必要なのです。

この力が育っているということは、お子さんがことばの音の仕組みを深く理解し始めている証拠。それは、今後ひらがなを学ぶ際に、文字と音を結びつけてスムーズに読み書きの力を獲得していくための、強力な土台が築かれていることを意味します。

いつからできるの?焦らなくて大丈夫

一般的に、単語逆唱ができるようになるのは、年中さんから年長さん(4歳〜6歳)くらいにかけてと言われていますが、個人差がとても大きいものです。

お子さんがまだできなくても、「〇〇ちゃんはできるのに…」と比べず、お子さん自身のペースを大切にしてあげてください。

ご家庭でできる、楽しいことば遊び

単語逆唱は、訓練して無理にやらせるものではありません。お子さんが自然に楽しめる「ことば遊び」の一つとして取り入れるのがおすすめです。

  • しりとり: 定番ですが、音韻意識を育む最高の遊びです。
  • 頭文字クイズ: 「『り』から始まる、赤くて丸い果物はなあに?」といったクイズです。
  • さかさことばクイズ: お子さんが興味を持ったら、「『ぱんだ』をさかさまにすると、なんて言うかな?」と一緒に考えてみましょう。大人が間違えて「だんぱ!」などと言ってみせるのも、子どもは喜びます。

大切なのは、親子で楽しみながら、ことばの面白さに触れることです。お子さんのユニークな「さかさことば」を、ぜひ笑顔で受け止めてあげてください。

まとめ

一見すると不思議な「さかさことば」は、お子さんの脳がことばの音をしっかり捉え、操作できるまでに成長した、喜ばしい発達のサインです。

それは、これからはじまる「読み書き」学習への準備が整いつつある証でもあります。

日々の生活の中での楽しいことば遊びを通して、お子さんの素晴らしい「聞く力」「ことばを操る力」を、これからも温かく育んでいってあげてくださいね。