
「担任しているクラスに自閉スペクトラム症と診断された子がいる。どうやって関わってあげたら楽しく保育園生活を送れるのかな?関わりのポイントを分かりやすく教えてほしいな。」
こういった疑問におこたえします。
自閉スペクトラム症と診断されたお子さんの保育では、悩むことも多いですよね。
私は言語聴覚士という職業で、障害をもつ子どもたちの発達支援を担当しています。
仕事の中で、実際に保育園に出向いて、集団生活の中での配慮・関わりのポイントを保育士の方々と一緒に考えることも多いです。
この記事で紹介する関わりの5つのポイントを意識した環境調整を行うことで、自閉スペクトラム症をもつ子の安心感を高めることができます。
この記事を読むことで、どのように関われば良いのかという指針が得られ、あなたも自信をもってお子さんと関われることも増えるはずです。
そして、子どもとの関わりを通して、障害児保育をやってみたいな、とあなたが思ってくれたら個人的には嬉しいなと思って記事を作成しました。
それでは、さっそくお読みください。

自閉スペクトラム症とは?

自閉スペクトラム症とは、産まれつきの脳の機能障害から生じる発達障害のひとつ。
育て方やしつけの問題ではないかと悩む保護者もいますが、そうではありません。
自閉スペクトラム症をもつ子では、対人関係が苦手・強いこだわりがあるといった特徴があります。
そのため、保育の集団生活の中で、みんなと一緒行動できなかったり、お友達とトラブルになったりしやすいためサポートが必要です。
詳しくは、以下の記事でまとめていますのでお読みください。

自閉スペクトラム症の保育での関わり:5つのポイント

自閉スペクトラム症をもつお子さんへの保育上の関わりでは、以下の5つのポイントをおさえてあげてほしいと思います。
- 目で見て分かる手がかりを与える
- 不要な変化は避ける
- 見通しを持たせる
- お友達との関わりを支える
- 苦手な刺激はできるだけ避ける
これらの支援を日常の中に組み込むだけで、子どもの安心感を高めることができます。
まず、安心できる環境をととのえてあげることが、自閉スペクトラム症をもつ子の保育を考える上で重要です。
目で見て分かる手がかりを与える
自閉スペクトラム症をもつ子の多くで、聞いて理解するよりも見て理解することが得意(視覚優位)という特性をもっています。
そのため、イラストやデモンストレーションのように視覚的に情報を伝えてあげることで理解がスムーズになることが多いです。
ことばだけではなく、視覚的な情報を補うように工夫してあげてください。
見て分かるように環境をととのえてあげる支援のひとつに「構造化」があります。
詳しくは以下の記事もお読みください。

不要な変化は避ける
自閉スペクトラム症をもつ子の多くで、環境や関わりの変化を受け入れることに苦労することが多いです。
たとえば、学年が上がる時に部屋が下駄箱、ロッカーの位置などが変わってしまうと、混乱して不安になってしまいます。
とはいえ、ある程度の変化は避けることができない場面もあるかと思います。
そのような時には、あらかじめ子どもに変化の内容を伝えてあげましょう。
また、自分のマークは学年が上がっても変わらない等、可能な限り変化が少なくなるように工夫してあげてください。
見通しを持たせる
自閉スペクトラム症をもつ子の多くで、先の見通しが分からないと不安を感じてしまいます。
先の見通しを立てるために、最初はある程度決まった順番で活動を繰り返し経験させてあげることも必要でしょう。
また、写真やイラストで1日の流れを示してあげるのも良いです。
お誕生日会など、いつもと活動の流れが変わる時なども、写真やイラストのスケジュールに慣れておくと伝えやすくなります。
お友達との関わりを支える
自閉スペクトラム症をもつ子の多くで、対人関係の苦手さをもっています。
しかし、自閉スペクトラム症をもつ子どもでも、成長にともなって対人関係も発達していきます。
子どもの発達の状態に合わせて、お友達との関わりを支えてあげる必要があります。
どうしてもトラブルが増える時期もあると思いますが、本人のワガママと決めつけずに、どのような支援があればお友達とうまく関われるのかを考えてあげてほしいと思います。
>>遊びの発達については以下の記事もお読みください。

苦手な刺激はできるだけ避ける
自閉スペクトラム症をもつ子の多くで、感覚異常があることが知られています。
感覚異常とは、たとえば「苦手な音がある」「触れられるのが嫌」など、それぞれの子によって示し方は変わってきます。
このような感覚異常に関しては、苦手な刺激を遠ざけるように対応してあげてください。
あなたも鏡をひっかいた時に出るような音は耐えがたく、できれば聞かずに生活したいですよね?
似たような状態と想像して対応を考えてあげてほしいと思います。
感覚の問題については、以下の記事で解説しています。

また、感覚異常は「偏食」として生活上の困難につながることもあります。
偏食に関しては、以下の記事も併せてお読みください。

こんな時どうする?自閉スペクトラム症をもつ子への対応

自閉スペクトラム症をもつ子の保育を担当するうえで、「かんしゃく」「こだわり」への対応に苦慮することも少なくありませんよね。
ここでは、「かんしゃく」と「こだわり」への対応の基本を解説します。
かんしゃく
泣いて、怒って、汗だくになって・・・
なんでこんなにかんしゃくを起こすんだろう?
突然にかんしゃくを起こしたように見える子でも、きっかけとなる出来事がある場合がほとんどです。
まずは、かんしゃくの原因を探ってみましょう。
- 周りがうるさくてイライラした?
- いつもと活動の流れが違って混乱した?
- 先の見通しが立たずに不安だった?
かんしゃくの原因が見えてきたら、その原因への対処をしていきましょう。
「かんしゃく」に関しては、できるだけ起こしにくい環境をととのえてあげることが大切です。

まずは子どもに危険がおよばないような場所に移動しましょう。
そのうえで、本人が落ち着くまで待ってあげましょう。
かんしゃく・パニック中にあれこれ伝えても、頭の中が噴火しているため届きません。
クールダウンしてから、伝えるべきことは伝えてあげましょう。
その時に、クールダウンできたことをしっかりと認めて・褒めてあげてほしいと思います。
その繰り返しで、感情のコントロールも学んでいきます。
こだわり
「〇〇じゃないと嫌だ」「〇〇以外はダメ」など
なんでこんな些細なことにこだわって先に進めなくなってしまうのだろうか?
日によってこだわりが強くでる時と、それほどこだわらない日があるような子も多いです。
一般的に、こだわりは不安な時・不安定な時に強くでやすいといわれています。
こだわりと戦う前に、子どもに安心感を提供できているかを今一度考えてみてください。
安心感へのヒントは、上記の5つのポイントがまず提供されているかを確認しましょう。
また、こだわりをやめさせようと戦っている保育士も散見します。
しかし、こだわりはやめさせるのではなく、他の行動に置き換えていくことが原則です。
たとえば、大きなバスタオルを持ち歩くことがこだわりの子なら、似たような触感の小さいタオルに変更するなど。
子どもの発達の状態に合わせて、考えてあげてほしいと思います。
まとめ:支援の基本はスモール・ステップで

いかがでしたでしょうか?
自閉スペクトラム症の特徴と保育上でのポイントを解説しました。
保育で気をつけたい5つのポイントは以下。
- 目で見て分かる手がかりを与える
- 不要な変化は避ける
- 見通しを持たせる
- お友達との関わりを支える
- 苦手な刺激はできるだけ避ける
自閉スペクトラム症をもつ子も、その子のペースで着実に成長・発達します。
保育の中では、お子さんの発達に合わせて、スモール・ステップを組んで育ててあげてほしいと思います。
>>スモール・ステップについてはこちらの記事へ

このように、丁寧に配慮した保育を考えることは、保育のスキルアップにつながります。
発達を丁寧に観察し、何に困っているのかを洞察、支援を試行錯誤する過程の中で、新たな気づきがあるはずです。
そのようにして得た「気づき」は、必ず通常の保育の中でも活かせるスキルとなります。
ぜひ、自閉スペクトラム症などの障害をもつ子の保育に取り組む保育士さんが増えてくれることを願っています。

