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ダウン症児の離乳食を【食べない】【拒否する】時の原因と対応の仕方

ダウン症児が離乳食を食べない原因と対応

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ダウン症のお子さんへ離乳食を始めたが上手く進まず悩んでいる人「離乳食を始めたけどあまり食べてくれない。食べることを拒否することもある。なんで食べてくれないのかを知りたい。こうやって拒否している時にはどう対応したらいいんだろう」

こういった疑問に答えます。

離乳食がうまく進まないと心配になりますよね。多くの親御さんたちが同じように心配し、悩まれています。

しかし、成長とともに改善していくお子さんたちも多いです。

本記事では、以下の8つのポイントでお子さんたちの「食べない」「拒否する」を考えてみます。

  • 離乳食の開始時期を見直す(哺乳反射の消失を待つ)
  • お腹がすいている時間帯にTRYしてみる
  • 食べる機能と離乳食の形態を合わせる
  • 座る姿勢を安定させる
  • 味付けを年齢相応にする
  • 少しずつ固形の触感になれさせる
  • イヤイヤ期に応じた対応をする
  • 大人が食べているモデルを見せる

この記事を書いた人
Twitter(@hagukumichild

僕は上記のように発達障害をもつお子さんたちのことばの指導を担当するとともに、同じく15年以上、ダウン症や脳性まひなどをもつお子さんたちの摂食に関する支援・指導も担当してきました。その経験から、上記のお悩みに対してお答えしていきます。

最後まで読んでいただくことで、あなたとお子さんの離乳食の時間が今より楽しく穏やかな時間となるよう願っています。

離乳食の目的

離乳食の期間はそれまでミルクから影響をとってきたあかちゃんが、食べ物から栄養摂取をするためのスキルを発達させていく時期です。

最初はドロドロにすりつぶした離乳食から始めて(離乳初期)、お豆腐のように形はあるけどやわらかい食べ物を導入し(離乳中期)、固形物の摂取(離乳後期)へと段階的に進めていきます。

この時期のお子さんの多くは母乳やミルクを併用しながら離乳食を食べている場合がほとんどです。

母乳やミルクで必要な影響の多くは補給できるため、離乳食では栄養をとるというよりは、食べるための機能(飲み込む・咀嚼する)を成長させていくことが第一の目的になります。

>>ダウン症のお子さんの離乳食の進め方についてはこちらの記事へ

離乳食を食べない・拒否する原因と対応

対応1:離乳食の開始の時期を見直す

一般的に、あかちゃんは哺乳反射という授乳を成功させるために産まれながら備わっている反射行動があります。

定型発達児は、この哺乳反射が生後5~6ヶ月頃に成長に伴い消えていきます。そして、この哺乳反射が消えていくタイミングで離乳食を開始する場合が多いです。

哺乳反射は授乳のためには大切な反射ですが、離乳食を食べるとなると食べ物が口に入った時に吸啜の舌の動きで食べ物をお口の外に押し出してしまうため食べることをじゃましてしまいます。

ダウン症のお子さんの場合には発達がゆっくりなため、この哺乳反射が定型発達児よりも長い期間のこっている場合も少なくありません。

そのため、離乳食を始めて間もない時期に、離乳食を食べてくれないと感じる場合には、お子さんの口の中にスプーンを入れてみて、舌が前後に動きながらスプーンを押し出してくるかどうかを見てください。

スプーンが押し出される場合には、哺乳反射が残っている場合が多いと思います。

哺乳反射は成長とともに消失していきますので、消失時期になれば上手く食べられるようになるお子さんも多いです。

スプーンを口の中に入れられない程に哺乳反射が強く残っている場合には、離乳食の開始は少し待って、お子さんの成長を待った方が良いかもしれません。

何とかスプーンを口の中に入れてくれるようであれば、味見程度に離乳食を開始できます。この時期は栄養摂取が離乳食の目的ではないので、味を楽しめればそれでOKです。

対応2:お腹がすいている時間帯にTRYしてみる

当たり前ですが、お子さんたちはお腹がすいていない時には食べません。

そのため、前回の授乳から離乳食をあげる時間までの時間を把握してみましょう。

ダウン症のお子さんたちは、吸啜のパワーが弱いため一回の授乳で必要量を飲み切れず、通常よりも頻回に授乳をしている場合も多いかもしれません。

授乳間隔はお子さんによって異なると思いますので、自分の子どもは何時間おきに授乳しているのか把握してみてください。

そして、1日のうちで、普段なら授乳をするはずの時間(すなわちお腹がすいているであろう時間)をめがけて離乳食を出してみると良いと思います。

対応3:食べる機能と離乳食の形態を合わせる

ダウン症のお子さんは、定型発達児に比べると食べる機能はゆっくりと育ちます。

そのため、定型発達児の月齢で示されている目安に合わせて離乳を進めると、食べる機能と離乳食の固さが合わなくなってしまいます。

子どもの食べる機能では処理しきれない固さの食べ物が口に入ってくるため拒否しているという場合も少なくありません。

お子さんが舌と上あごで押しつぶせるような機能を持っているのか、咀嚼が可能なのかということを丁寧に観察しながら、適当な食事の固さや形状を決めていけるとよいでしょう。

お子さんが獲得している食べる機能で無理なく食べられる固さ・形態の離乳食を用意してあげましょう。

食べる機能の育ち方や観察の仕方についてはこちらの記事をごらんください。

ただ、この食べる機能を把握するのは少しコツが必要になりますので、できれば言語聴覚士などの専門職と一緒に確認できると安心です。

対応4:座る姿勢を安定させる

私たち大人でも食べる姿勢が不安定だと、飲み込む機能にマイナスの影響を与えることが分かっています(例えばAlghadir et al., 2017)。

食べるために口を上手に動かすためには、姿勢が安定していることが前提になります。

人の体は、「腰」という土台の上に「体」がのっており、「体」の上に「頭」がのっています。

「頭」についている「口や舌」を器用に動かすためには、その土台である「腰」や「体」がしっかりと安定している必要があるのです。

お子さんの運動発達に合わせた椅子を選んであげると姿勢が安定してお子さん自身も食べやすくなり、食べる意欲が出てくるかもしれません。

>>ダウン症のお子さんが離乳食を食べるときに使いたい椅子はこちらの記事

対応5:味付けを年齢相応にする

ダウン症のお子さんたちは、食べる機能はゆっくりと育ちますが、味覚はしっかりと育ってきます。そして、体が必要とする塩分量なども成長に伴って増えてきます。

定型発達児で示されているような「離乳初期:5~6ヶ月」では、塩分はかなり薄めの離乳食になっています。

ダウン症のお子さんたちは、1歳過ぎまで離乳初期食が続くことも珍しくありません。しかし、味覚は育ち、必要な塩分量も増えてくるため、定型発達児用の離乳食では味が物足りなく感じている子も多いようです。

ダウン症児のお子さんの場合にも、年齢相応に味付けをしてあげると食べが良くなる場合があります。

要するに、1歳のダウン症児なら、定型発達児で示されているような離乳後期食くらいの味付けをした料理を、ミキサーにかけてドロドロにすることで「離乳後期相当の味付けをした離乳初期食」にしてあげてみましょう。

対応6:少しずつ固形の触感になれさせる

ダウン症のお子さんの中には、口の中の感覚の受け取りがとても鈍かったり、逆にとても敏感だったりする場合があります(Bruni et al., 2010)。

離乳初期食でドロドロのものを食べている分には良かったが、中期食に進めようとして少し形があるものをあげようと思ったとたんに、食べることを嫌がるお子さんも少なくありません。

このような場合には、少しずつ触感になれさせていくような工夫が必要になります。

例えば、乳児用せんべいを粉々にしたものを少量スプーンで口の中に入れてみる、少しだけ粒が残ったおかゆにしてみる等、できればお子さんが好きな味の食べ物をほんの少しだけ(最初はお子さんにはばれないくらい微妙な変化として)与えてみてください。

1回では上手くいかないことが多いですが、あきらめずに何回か試してみることをおすすめします。

また、食べ物以外でも、様々な食感を遊びの中で経験させていくことも良い影響を与えるかもしれません、

例えば、小麦粉粘土を一緒につくってみたり、ゆでる前のマカロニに手を突っ込んでみたり、泡立てたせっけんに触ってみたり。まずは手の触って許せる感覚を増やしてあげると、口の中に入れた時も大丈夫になることもあります。

対応7:イヤイヤ期に応じた対応をする

ちょうど離乳食の時期に自我が育ってくるお子さんも多いです。

それまでは親に従順に、与えられた食べ物はパクパクと食べていたのに、ある時からプイッと横を向いて拒否したり、「いらない」と手を横に振ったりとアピールするようになってきます。

これ自体は、「自分はこうしたい!」という気持ちが育ち、それを相手に何かしらの手段で伝えようとするようになったという点で、よろこばしい成長の一つだと思います。

ただ、これが毎回の食事で続いてしまうと、さすがに困ってしまいますよね。

成長とともに、拒否することは減り、またちゃんと食べ始める日が必ず来ますが、ダウン症のお子さんは成長がゆっくりなので、それまでが長い…。

このような自我が出てきている時には、「自分で」という気持ちに寄り添うことで上手くいくことがあります。

例えば、手づかみでもなんでもいいから「自分で」食べさせてみる(片付けは大変ですが)。

おさらをふたつ見せながら「どっちを食べる?」と「自分で」決めさせる。

「自分で」スプーンの準備をさせてみる。

などなど。

あともう一つ大切なことが、「食べてほしい」といった気持ちを大人が前面に出さないこと。なかなか食べてくれないと、自然と離乳食の時間に暗い表情になってしまったり、こわい顔つきになってしまったりします。

「まぁ、食べなくてもいいか」くらいの気楽な気持ちで数日のあいだは笑顔でお子さんの離乳食を出してあげると、意外と食べてくれることもあるようです。

対応8:大人が食べているモデルを見せる

最近の研究では、偏食(過度の好き嫌い)を防ぐための家庭での関わりとして、親が子どもと一緒に食事をとること親が良いモデルを見せること等が推奨されています(例えば、Emmett et al., 2018)。

さらに、親が子どもに食べることへのプレッシャーをかけずに、食べ慣れていない食べ物や一度拒否された食べ物を繰り返し食卓に出しながら親がおいしそうに食べてみせることが望まれています(例えばFries et al., 2017)。

近年では核家族化が進んだこともあり、離乳食を家庭で母親がひとりであげるといった場合も少なくありません。

昔はおばあちゃんとおかあさんが交替で食事をとりながら子どもに離乳食をあげたりしていたため、自然と子どもが大人が食べている姿を目にしながら、自分も食べていました。

忙しく、ゆっくり食べることができないので大変ですが、時々はお子さんと一緒のタイミングで親が食べ物を食べてあげる時間も作ってみてください。

子ども用の食事を少し多めに作って、子どもに離乳食をあげながら、親が離乳食を時々つまみ食いする形でも良いと思います。

無理のない範囲で、親がおいしそうに食べてみせることで、つられてお子さんも食べてくれるかもしれません。

まとめ:食べてくれないからといって過度に焦らないでOK

本記事では、以下の8つの対応について解説しました。

お子さんが離乳食を「食べない」「拒否する」理由はおそらく1つではなく、いくつかの要因が組みあわさっている場合が多いと思います。

しかしながら、これらは成長とともに食べるようになってくることも多いです。

いろいろと試してみたけど、なんだか上手くいかない・・・といったお子さんでも、成長とともにいつの間にか食べられるようになっていく子を何人も経験します。

ただし、体重が減ってしまったり、母乳やミルクも含めて水分が全然とれないといった状態の場合には、成長や栄養面で問題がないか医療機関で相談してみると良いでしょう。

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1 COMMENT

Komatsu Noriko

ブログで情報発信ありがとうございます。毎回興味深く拝見しています。

25歳の長男の経験です。
療育センターの先生からアドバイスいただきながら離乳食を進めました。

振り返って思うのは、一番必要だったのは『待つ余裕』でした。
親は、欲目と焦りから先に進めたくなりがちなんですが、形態が合っていないとスムーズにいきません。それで余計に焦って、自分のやり方が悪いから進まないんだと負のスパイラルに陥ります。
そんな時、療育センターの先生から言われて救われた言葉があります。
「きちんと食べさせるのは最初か最後の5分でいいです」
子が落ち着いて食べてくれるタイミングで、一口でもきちんと唇を閉じてスプーンから捕食して咀嚼できたら、あとは好きに食べさせてあげましょう、という主旨だったと記憶しています。

食事ごとに一回づつでもきちんと食べることを積み上げていく。
完成するまで次の形態には進まない。
無理強いは将来の丸呑みに繋がる。
お茶は食事後に食卓に出す。最後に飲んで口の中を綺麗にする。

上記の繰り返しで、大人と同じ形態のいろんな食材を親が配慮しなくても食べられるようになったのは、小学校高学年〜中学生ぐらいだったと記憶しています。苦手だった刺身も、回転寿司に通ううちに、ある日突然食べられるようになりました。(はじめはミートボール軍艦とかツナマヨとかを食べていました)ワサビは高等部になってから、少しなら「大人だから(大丈夫)」と言って食べられるようになりました。今は激辛以外はほぼ好き嫌いなく、食事を楽しんでいます。

周囲の成人したダウン症仲間は、皆さんほぼ例外なく食べることが大好きです。
社会人になって活動量が減ると、やはり肥満に悩みます。
もし、今の私が20年以上前の私にアドバイスできるなら、
「必ず食べられるようになるし体も大きくなるから、今は無理してたくさん食べさせようとしないで」
と言いたいです。
幼少期は体重を増やして身長も伸ばしたい、と切実に考えます。
でも、その子なりにちゃんと成長します。子が嫌がるなら無理に食べさせないで様子を見て進めていったほうが、成人期の健康に繋がっていくのではと感じます。

ちなみに、2歳下の弟は、私がのんびり離乳食を進めていたら、11か月に入ったある日、食卓で怒り出しました。言葉はまだですが、自分に用意された食事を嫌がり、大人用の食事を指差して訴えます。
「え?こっちが食べたいの?食べられるの?」
次男の剣幕に、半信半疑で大人のオカズを小さく切ってあげたら見事に咀嚼して食べました!子の声を聴けってこういうことか。自分に必要なものを、子はちゃんとわかっているんだ。驚愕とともに学んだシーンでした。

お尋ねの意図とズレていたら申し訳ありません。
最後まで読んでくださってありがとうございました。

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