ダウン症児の語いを広げて2語文へつなげる関わり

ことばが出てきたダウン症のお子さんの親「ようやく言葉らしい表現ができて良かった。でも、「りんご」だったら「ご」と単語の最後の音だけを言うことが多い。この先の言語発達がどのように成長していくのかの見通しがみえず不安。どのように言葉が成長していくのか、どのように関わってあげたら良いのか知りたいわ。」

そういった疑問にこたえます。

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僕は言語聴覚士(ST)という資格で発達がゆっくりなお子さんたちのことばの指導・支援を行っています。担当させて頂いているお子さんたちの中に、ダウン症をもつ子たちもたくさんいらっしゃいます。ダウン症のお子さんへのことばの指導を行ってきた経験や知識から、ダウン症児の言語発達について解説します。

それでは、さっそくみていきましょう。

ダウン症児の言語発達①:単語の音のイメージを育てる

ダウン症のお子さんでは、ことばで話し始めた時に「りんご」だったら「ご」、「ひこうき」だったら「き」と単語の中の一部の音だけで表現する時期がある場合も多いです。

これは単語の中に含まれている音をしっかりとイメージすることがまだ難しいことが原因のひとつです。

こういったお子さんでも、「わんわん」「ぶーん」などの擬音語・擬態語は正確に言えることも多いです。

擬音語や擬態語については、語彙を増やすうえで以下のメリットがあります。

  • 音が繰り返されている
  • 言いやすい
  • 音のイメージから意味が理解しやすい

お子さんが話し始めたけど、単語の一部の音しか言えないといった場合には、まずは周囲の大人が擬音語や擬態語をたくさんつかって関わってあげましょう

音が繰り返されている:擬音語・擬態語のメリット①

擬音語・擬態語には、「わんわん」「じゅーじゅー」などの音の繰り返しが多く用いられています。

まだ、聞いた情報をたくさん頭にとどめておく(記憶する)ことが苦手なお子さんたちが多いです。

このように繰り返されていると、声かけの後半の一部分だけ把握できたとしても(例:「ほら、大きいワンワンだね」→「〇※△×ワンだね」)、なんとなく犬のことを言っているんだな、ということは分かります。

そして、聞き取れた音をただ繰り返せばいいだけなので、単語としても覚えやすいです(例えば、「わん」だけ聞こえたとしても、それが「わんわん」であることは容易に想像できます)。

要するに、擬音語や擬態語には音が繰り返されているため、単語の音自体が覚えやすいといった特徴があります。

言いやすい:擬音語・擬態語のメリット②

擬音語・擬態語の多くは、両唇音といってくちびるを使って発音する音が多く含まれています。

子どもたちは、このようなくちびるを使って言う両唇音である「パ行」「バ行」「マ行」が最初に言えるようになります。

そのため、「ママ」「パパ」「ばーば」「ブーブ」などが最初のことばだったなんて子が多いんですね。

両唇音が子どもたちにとって簡単である理由として、発音している人のくちびるがパクパク動くので見た目で分かりやすいといった点があります。

擬音語・擬態語では、「ぶーぶ」「ぽんぽん」「ばーん」「ぼーん」など、両唇音がたくさん含まれています。

そのため、擬音語や擬態語は子どもたちが真似しやすく、初期のころから言いやすいことばということになります。

音のイメージから意味が理解しやすい:擬音語・擬態語のメリット③

「ぽい」「ぎゅー」「とんとん」などの声かけを「聞く→真似する」といったやりとりが単語の音のイメージを育てます。

では、なぜ擬音語や擬態語が音をイメージしやすいのでしょうか。

その理由の一つに、ブーバ/キキ効果とよばれる心理学で証明されていることばの音と形の認識の関係が影響しているかもしれません。

下の図を見てください。どちらかの図形が「ぶーば」、どちらかの図形が「キキ」です。どちらが「ぶーば」だと思いますか?

おそらく、多くの方が〇を「ぶーば」だと感じたのではないでしょうか?

私たちには、音が持つイメージが潜在的に存在しています(これを音表象といったりするそうです)。

「びちょびちょ」「べたべた」などの擬態語は、この音自体がもつイメージから語のもつ意味を理解しやすくなっている部分もあるのかもしれません。

要するに、擬音語や擬態語には、このような音自体が意味の理解を助けてくれる仕掛けが含まれています。

擬音語・擬態語でちゃんと言える音が増えてくると、次は「くつ」などの2文字単語、つづいて「たいこ」などの3文字単語と徐々に音の多い単語へとつながっていきます。

最初は聞き取りやすいように、ゆっくり・はっきり言って聞かせてあげてください。

ダウン症児の言語発達②:語いを増やす

上記のような単語の音のイメージを育てることと併せて、語いを増やしていくことで2語文へつながりやすくなります。

個人差が大きいので一概には言えませんが、50語以上の語いが獲得されると2語文につながっていく場合が多いです。

そして、習得されている語いは名詞だけではなく、動詞や形容詞が含まれていることが望ましいです。

なぜなら、2語文は「ごみ、ぽい」「ぶーぶ、きた」など「名詞+動詞」という文法であったり、「おっきい、ぶーぶ」などの「大小+名詞」だったりすることが多いためです。

そのため、動詞や形容詞が増えてこないと、2語文の理解にはつながりにくいといったことが分かっていただけるかと思います。

しかし、動詞形容詞は名詞よりも抽象的な語彙となります。

例えば、名詞の場合には、「車」と言えば、そこに車があります。

しかし、動詞や形容詞の場合、「投げる」と言っても、そこに投げるというものは存在しません。

しかも、人がやっている動きのことを言っているので、「投げる」行為は一瞬で終わってしまいます。

さらに、「投げる」という行為が、人の表情をあらわしているのか、踏ん張っている足のことをいっているのか、降り下ろしている腕のことを言っているのか明確ではありません。

動詞や形容詞などの抽象的な語彙を覚えるためには、以下の2つのポイントが役に立つかもしれません。

  • 擬態語を交えて伝える
  • 動作・気持ちの言語化

擬態語を交えて伝える

「シュッ」「ポン」「ビューン」などの擬態語は動作とことばを感覚的につなげやすくしてくれます。

投げる動作を見た時に「シュッ」という擬態語を聞けば、なんとなく素早く降り下ろしている腕の動きのことを言っているのかな?と推測しやすくなります。

また、擬態語は通常のことばよりも、言いやすい音でできています。

「シュッって投げて」といった具合に、擬態語と通常のことばをペアにして言って聞かせてあげると良いと思います。

子どもの動作・気持ちの言語化

相手の動作や気持ちから語を学ぶことももちろんありますが、自分がやっている時感じている時に対応する語を聞いた方が覚えやすくなります。

子どもがボールを投げる時には「ぽーん、投げたね」、ごみを捨ててくれた時に「ぽーい、捨ててくれありがと」などと声かけをしてあげてください。

子どもが自分からやった行動に対して、その場その場で声かけをしてあげることがコツです。

このような声かけは、ナレーターがやるような関わり方のため、「ナレート」と言われたりします。

自分がやっている動作に対して、その場で語彙が聞こえてくると子どもにとっては分かりやすくなります。

同様に、気持ちについても「うわぁ~、楽しいね」、「重いね、よいしょよいしょ」など言いながら遊んであげると、自分が感じているこの気持ちはそういうことばなんだ、ということに少しずつ気づき、ことばを覚えていきます。

>>語いを広げるための関わりや玩具の紹介はこちらの記事

ダウン症児の言語発達③:2語文へつなげる

お子さんの語いが増えてきたら、いよいよ2語文へとつながっていきます。

そのための関わり方のポイントは以下の2つです。

  • ゆっくり・はっきり言って聞かせる
  • ジェスチャーを交えながら伝えてあげる

ゆっくり・はっきり言って聞かせる

お子さんたちはまだたくさんの情報を記憶することが苦手です。

2語文につなげていくためには、「おおきい、ブーブ」など2つの言葉を覚えておく必要があります。

覚えやすくしてあげるために、お子さんへの声かけはゆっくり・はっきりと言って聞かせてあげてください。

下記のジェスチャーを交えることで、情報がことばだけでなく視覚情報としても伝わるため記憶の負荷を軽減できます。

特に、ダウン症のお子さんの場合には、聞いた情報を覚えるよりも、見た情報を覚えることが得意な子が多いです。

ジェスチャーを交えながら伝えてあげる

子どもたちは、まずは「単語のみ」、続いて「単語+ジェスチャー」、そして「単語+擬態語」などの2語文と成長していきます。

ダウン症のお子さんたちは、この「単語+ジェスチャー」の時期が少し長いような印象です。

たとえば、「おちゃ」と言いながら「ちょうだい」のジェスチャーをするといった感じです。

しかし、ことばで話せるようになる前に、ジェスチャーで十分表現を広げておくことが大切なことは、多くの研究で証明されてきています。

ダウン症のお子さんの場合、ことばを話す前にジェスチャーでの表現が増えることが多いです。

同じように、2語文へと進める際にも、ジェスチャーを交えながら気持ちを伝えてくれようとする姿が増えることがとても大切です。

そのためには、周囲の大人がジェスチャーを使用して関わることで、表現の仕方のお手本を見せてあげる必要があります。

ジェスチャーの重要性については、こちらの記事もお読みください。

ジェスチャーは以下の幼児手話を参考にすると、周囲の大人も使いやすくなると思います。

ぜひ、たくさんジェスチャーを交えながらやりとりを楽しんでください!

まとめ

以上、ダウン症児のお子さんの単語の出始めから2語文につながるまでに大切にしたい関わりのポイントを解説しました。

2語文へとつなげていくために大切なポイントは以下の2つです。

  1. 単語の音のイメージを育てる
  2. 語いを増やす

そして、いずれのポイントでも擬音語・擬態語が重要な役割をはたします。

最初に解説した「単語の一部の音だけを言う」という時期がダウン症のお子さんでは長いのが特徴的です。

でも、たいていのお子さんたちでは、ちゃんと成長していつか2語文が出てくることも多いです。

焦らず、着実に、2語文の基礎を育てながら成長を待ってみましょう。

語いを増やすための関わり方や玩具の選び方については>>こちらの記事

ジェスチャーの参考になる手話の書籍:

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