
少しずつ会話はできるようになってきたけど、子どもからの話が一方的で会話のキャッチボールができない。どうしたら、双方向の会話ができるようになるのかしら?
会話のキャッチボールがままならない状態のお子さん。
周りのお子さんたちが、親と会話を楽しんでいるの見ると、少し焦ってしまいますよね。
しかし、会話はある時に急に出来るわけではなく、少しずつステップを上がりながら上達していきます。
ことばの発達の順番(道筋)を知ることができれば、どのように支援してあげたら良いのかが分かってきます。
今回の記事では、
- 会話に関することばの発達の順番
- どのような方法で会話(ことば)の練習をするのか
この2点について解説します。

読み終わった週末から実践できる練習のコツをお伝えします。最後までお読みいただき、お子さんの会話を育てましょう。
それでは、はじめましょう。

私は言語聴覚士として子どものことばの発達を支援しています。その経験と知識から、本記事ではことばの発達の順番を解説していきます。
言葉の発達に大切な3つのこと:会話が上手になる順番を理解しよう

現前事象:目の前に話題の対象となるものがある。例えば、おもちゃで遊びながら、そのおもちゃについて話す場合。
非現前事象:目の前に話題の対象となるものがない。例えば、家に帰ってきてから、幼稚園であったことを話す場合。
いきなり難しい専門用語かよ・・・って感じですよね。
でも、ここはとても大切な部分なので、ぜひ理解してください。
子どもたちは、現前事象の話題(目の前に対象物がある場合)でしか話せない時期から、徐々に非現前事象での話題(目の前に対象物がない場合)でも話せるようになっていきます。
簡単にいうと、遊んでいるおもちゃに関する話(現前)だけでなく、家に帰ってきてから保育園でのことを話すこと(非現前)ができるようになっていきます。
また、非現前事象の中でも、最初は自分の経験にあることに話題は限られますが、徐々に未経験のことや「もし、〇〇だったら」といった仮定を話題にあげることもできるようになっていきます。
現前事象 → 非現前事象
この矢印の意味(発達の順番)が分かればOKです!
最初の頃は、話しているうちに自分が話した内容から連想して次々と話題が飛んでしまいますが、徐々に話題を維持して話せるようになります。
また、初期には自分が話している話題について、最初は相手がどのように聞いているかには無頓着で、自分の言いたいことだけ言っています。
しかし、成長につれて、少しずつ相手がどこまで分かってくれたのか、自分が話す内容について相手に事前知識がどの程度あるのか、などを気にできるようになっていきます。
連想で話題逸脱 → 話題維持
この矢印の意味(発達の順番)が分かればOKです!
お話が出てきた頃には、言いたいこともいっぱい。
相手の質問に対して、必要以上に長々と(冗長に)語ろうとします。
そうやって長々と語っているうちに、上記のように連想して話題が飛んでしまうことも多いです。
お話が上手になってくると、相手の事前知識にも気が配れるようになるということもあり、相手に伝わりやすく、内容を程よく要約して伝えられるようになってきます。
冗長 → 要約
この矢印の意味(発達の順番)が分かればOKです!
- 現前事象→非現前事象
- 連想で話題逸脱→話題維持
- 冗長→要約
以下、この3つの軸で発達の順番を考えていきましょう。
言葉の発達に大切な順番:会話がかみ合うようになっていく過程

話題の中心はまだ現前事象(目の前に話題となるものがある)ですが、少しずつ簡単な質問に対して、ことばで返せるようになってきます。
例えば、「なんさい?」と聞かれると、指を2本立てて「2さい」と言える子がでてきます。
この例のように、身振り手振りを交えながら伝えようとすることもこの時期の特徴です。
そして、わからないときには「分からない」と伝えることができるようになります。
その他、この時期には語いが広がって文でお話できることが増えてきます。
文での話がひろがるためには、動詞などの語いが増える必要があります。
>>文への発話へつなげる際に大切なことはこちらの記事をお読みください。

お話しの量が増えてきて、少し過去の話題のように非現前事象(目の前には話題となるものがない)についての説明が始まります。
しかし、一方で、相手の質問や自身の回答の内容から連想して考え、話題が逸れやすいことがこの時期の特徴です。
例えば、この時期には、「幼稚園でなにした?」と聞かれると、「ぶろっく(幼稚園でのこと)。パパ、ひこうきつくったね(家でのこと)」と話題が飛び飛びになりやすいです。
さらに、この時期には自己経験的に答えたり、話が冗長になりやすい子も多いです。
例えば、「幼稚園で先生に怒られたらどうする?」に対して、自己経験的に「おこらない」と答えたり、「ごめんなさいって言って、バイバイして、ただいまーって」と冗長に説明したりします。
また、色の概念の獲得が始まるお子さんもいます。

相手からことばで伝えられた情報をある程度しっかりとイメージでき、自身もことばで返すことができるようになりはじめます。
すなわち、非現前事象(目の前に話題となるものがない)でのやりとりが一層充実してくる時期です。
そして、完全ではありませんが、いくつかの文でつくられた文章で説明できるようになってきます。
そのため、会話らしい会話ができるようになってきたと、親から見ても実感しやすい時期です。
例えば、「なんで汚れたの?」と聞かれると、「お砂場したの。〇〇くんがじゃーってやってね。せんせい、お洋服ごしごしって」などと内容は不十分ですが、なんとか内容が推測できる程度には話せるようになってきます。
その他、数の概念なども少しずつ分かるようになってきます。

話題が逸れることが少なくなり、話題が維持されるようになるがこの時期の特徴です。
そのため、日常的な会話はかなりスムーズになってきます。
話す内容も少しずつ充実してくるため、言いたい内容も伝わりやすくはなりますが、まだことば足らずな説明も少なくはありません。
それでも、時系列に沿った説明ができるようにもなってきます。
例えば、「幼稚園いったらおはようして、かばんとかしまったら、あそんだの」など話してくれるようになります。
このように自分が経験した話題であれば説明することができるようになってきますが、まだ未経験の事柄を説明するのはむずかしい場合が多いです。
その他、発音が少しずつしっかりし始めるのもこの時期です。
ただし、発音に関しては4~6歳にかけてゆっくりと発達していきますし、個人差も大きいです。

4歳代でできるようになってきた話題の維持と時系列にそった説明がより一層上手になってきます。
さらに、相手に伝わりやすいように、必要なところはしっかりと詳しく伝えようとするようにもなってきます。
例えば、「だるまさんがころんだっていってね、鬼がいったらとまるの。もういっかい後ろ向いてだるまさんがころだっていって、走って鬼をタッチしたら終わり」などのように説明してくれます。
その他、ひらがなを習得するための土台となる力がついてくるのもこの時期です。

そして、6歳を超えると、相手の知識を考慮して説明を簡略化したり、詳しく説明したりできるようになってきます。
相手が自分の話そうとしている内容についてどの程度の知識を持っているかを確認しながら説明しようとするのもこの時期です。
例えば、「幼稚園で、ドロケイっていうのやったの。ドロケイって知ってる?泥棒と警察がいてね・・・」など。
また、自分が未経験のことでも、話題にあげて話せるようになります。
例えば、「もし、お空が飛べたら何をしたい?」などの仮定の質問についても自分なりの想いを言えるようになってきます。
ここまでくると、日常会話で困ることは少なくなり、お互いに円滑にコミュニケーションが進む場合が多いと思います。
言葉・会話の発達に大切な関わり方のコツ

- 現前事象(目の前に話題がある)で練習をする
非現前事象では、話題が目の前にないため、自分の話している内容から連想して話題がうつってしまうことが多くなりがちです。
しかし、目の前に話題となるものがあれば、話していて連想から話題が逸脱しても、また目の前にある話題のものに戻ってくることができます。
まずは、しっかりと目の前に話題がある状態での会話を経験し、積み上げてあげることで次の非現前事象での会話の維持につながっていきます。

- 話題を絞って聞いてあげる
- 写真を見ながら思い出を振り返る
幼稚園のお迎えに行ったときなど、「今日はお弁当全部食べた?」など、話題を絞って聞いてあげてください。
「お弁当どうだった?」と聞かれて答えられなくても、「全部食べた?」「たまご、おいしかった?」など話題を限定してあげると答えやすくなります。
同様に、「今日は何したの?」と聞くよりも、「お外で遊んだ?」「お砂場した?」「〇〇くんと遊んだ?」など、具体的に聞いてあげると答えられる場合もあるかもしれません。
そして、もうひとつおすすめなのが、写真を見ながら会話をすることです。
非現前事象(目の前に話題がない)での会話が難しい場合、写真を用意することで過去の話題が部分的に現前事象(目の前に話題がある)になります。
ぜひ、週末のおでかけや、ご家庭での遊びの風景をスマホでパシャリと撮っておいて、夕方に「今日はこんなことしたね」などと写真を見せながら振り返ってみてください。

- 会話の中でさりげなくお子さんの話を大人が要約して返してあげる
子どもが言ってくれた内容を、さりげなく要約してあげながら、伝え方のモデルを示してあげてください。
要約して返してあげることで、お子さんに「伝わったな」といった安心感も与えることができます。
先ほどの、「お砂場したの。〇〇くんがじゃーってやってね。せんせい、お洋服ごしごしって」と伝えてくれたお子さんへは、「お砂場でお水がかかっちゃったんだね」と伝えてあげると良いかもしれません。

- まずは本人が経験したことのあることから
- 絵本をつかって疑似体験
- その中でちょっとだけ未経験のことがらを入れてみる
基本的には本人の経験の範囲でお話をしながら、部分的に未経験のことについても聞いてみましょう。
例えば、「〇〇くんがカブトムシつかまえたよ」という話題の中で、「もし、隣にクワガタいたらどうする?」など、想像しやすいような似通った話題で未経験のことを聞いてみましょう。
絵本を使う場合には、ただ読み聞かせるだけではなく、読み聞かせながら「ぞうさんはどうしちゃったのかな」「なんで怒ってるのかな?」など、挿絵についてやりとりをしてみてください。
絵本の登場人物がやっていることを疑似体験することで、本人が未経験のことがらを話題にあげる練習にもなります。
もし、それでも難しければ、上記の非現前事象でのやりとりや、要約した説明の練習を繰り返しながら、全体的に会話の発達が進んでくるのを待つことで、未経験のことがらを話題にあげられるようになってくるかもしれません。
まとめ:言葉の発達を理解することが会話の上達に大切

会話の発達について解説し、お子さんの発達段階に合わせた関わりの例をお示ししました。
①お子さんの会話の発達がどの段階にいるのかを会話の中から把握しましょう
②会話の発達をうながす方法の中から、お子さんに合った方法を選んで実践してみましょう
最後までお読みいただきありがとうございました。
Twitterの僕のアカウント(@hagukumichild)でも毎日ことばの発達に関して、分かりやすく解説・ツイートしています。
当サイトでは【言葉の発達に大切なこと | ゆっくり?遅れてる?言語聴覚士が完全解説!】の記事に、ことばの発達に関する記事をまとめて紹介しています。
ことばの発達の順番に記事を並べていますので、お子さんの発達の状態に合わせてお読みいただけます。
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