
「療育に通わせているんだけど、なんだか遊ばせているだけのように見える…。こんなの意味あるのかな?」
こういったテーマの記事を書いてみようと思います。
- 遊んでいるだけの療育に意味はあるのか?
- 療育に遊びを利用した発達支援
- 疑問に思うことは、スタッフに聞いてみよう
子どもの発達を心配して通わせ始めた療育。専門的なトレーニングが始まるのかと思ったら、ただ遊んでいるだけに見える…。
こういったご相談をうけることも少なくありません。
遊んでいるだけの療育に意味はあるのでしょうか?どういうつもりでスタッフは遊んでいるのでしょうか?
実際に、言語聴覚士として療育を担当している僕の意見を書いてみようと思います。
【不満】遊んでいるだけの療育に意味はあるの?



結論、意味はあると思います。というか「遊び」こそ、発達支援の真骨頂です。
原則:子どもは遊びを通して発達する
よく「子どもは遊ぶことが仕事」と言われますよね。子どもたちは「遊び」という仕事を通して様々な経験をします。
子どもの発達には「様々な経験」が必要です。特に、あれこれと試行錯誤したり、探索したりする中で、自然と知識やスキルが身につく場合も多いです。
子どもたちが試行錯誤・探索しやすい環境を用意してあげる
このこと自体に大きな意味があります。療育では一人ひとりの子どもの発達や特性に合わせた環境を工夫しているわけですね。
「遊び=好きに遊ばせる=放置」ではない
療育の中で提供しているのは「好きなように遊ばせること」ではありません。
好きに遊ぶなら家での一人遊びと変わらないですからね。せっかく療育にきてくれたわけですから、いつもとは少し違う体験をしてほしいなと。
療育の中での遊びは、自分の力をしっかりと発揮しつつ、新たなスキルに触れられるように工夫していきたいと思っています。
「遊び」に見せた、丁寧な段階設定
子どもには「遊びに見せること」が大切。これに失敗すると、モチベーションを維持して取り組むことが難しくなってしまいます。
※でも、遊びに見えて中身は緻密。子どもが楽しみながら、狙ったスキルや知識を学べるように考えて遊びを構成しています。
もしくは、何気なく子どもが始めた遊びから、さりげなく誘導・発展させることで発達促進を狙うこともあります。
最初にすべきことは、子どもの発達の状態を評価すること。
なぜなら、遊びの内容を発達の状態に合わせることで効果が上がりやすいからです。
発達の状態に合わせた関わりの中で、「少しだけ背伸びをすれば届くスキルの獲得」を目指すわけですね。
楽しくないと、学べない
子どもたちが効率的に学べる環境を作るために、「遊び」を利用していきます。
要するに、「子どもに学ばせたいこと」が先にあり、それを達成するための遊びを選んで提供するような感じです。
そもそも、子どもは楽しみの中から生きるスキルを身につけていくものだと思うので、療育で遊びを利用するのは必然な流れかと。
子どもにとってモチベーションを保ちやすい「遊び」の中に、どれだけ専門的な関わりを織り交ぜられるかが、療育スタッフの腕の見せどころというわけですね。
※遊んでいるうちに、〇〇ができるようになっちゃった
理想は、こんな感じの関わりだと思っています。
遊んでいるだけに感じたら、療育スタッフに聞いてみよう



「遊んでるだけじゃん…」って思うなら、関わりの狙いを聞いてみましょう。
不満なら、聞いてみよう
「療育に通ってSTを受けているのですが、遊んでいるだけに見えます。子どもは楽しそうにしているのですが、わざわざ通わせる必要があるのか悩んでいます」
Twitterで頂いたDM
こういった内容をSNSで複数回もご相談いただいています。
僕も療育のスタンスは以下のような感じ。
僕がやることばの支援は、いっけんすると「遊び」になると思う。そして、そういうSTは多いんじゃないかな。
— ゆう@子ども専門の言語聴覚士 (@hagukumichild) October 24, 2021
大切なのは「遊びにみえる」ことを自覚して、ちゃんと説明する努力をしているかどうかだと思う。
遊びの中で狙ったことをちゃんと言語化して伝える。これが僕らの仕事の一つではないでしょうか
たぶん、遊びに見せるセラピーは多くの支援者がやっていると思います。ただ、もしかしたら狙いを保護者に伝えきれていないのかもしれないですね。
単刀直入に「〇〇の狙いは何ですか?」と聞いちゃっていいと思います。
実際に、僕も同席されている保護者の方から「今日やっていたパズルは、なんのためにやってたんですか?」などと聞かれることもあります。
最近では、できるだけこちらから説明するように心がけていますが、若い頃は不十分だったと反省です。
そして、もう一つ突っ込んで質問してみましょう。「この子ができるように、何を工夫してくれたんですか?」と。
保護者としては、これが分からないと生活の中で活かすことが難しいですよね。
家庭に持ち帰れるアドバイスが大事
療育中の時間なんて、生活の中の限られた時間でしかありません。
「子どもが何に困っていて、どうやったらうまくいくのか」そのヒントを得られれば、生活の中でもいろいろと応用できることがあるかも。
「遊んでいるだけ」の奥にある、療育スタッフの想いを聞いてみてほしいと思います。
我慢しないで、伝えてみよう
「あまり聞いたら、嫌がられるかな?」「そんなことも分からないの?って思われるかな…」などと思う必要がありません。
療育のスタッフは、それを専門として働いてい給料をもらっているわけです。要するにプロ。
質問したくらいで嫌がられたり、バカにしたりする人なんて見切りでいいですよ。僕なら、そんな人に大切な子どもを預けたくありません。
というわけで、今回はここまで。
「遊び」と「療育」について、僕なりの意見を書いてみました。賛否両論あるかもですが、何かの参考になればうれしいです。
追伸:
ことばの発達に関する療育に興味がある人へ。
『ことばの発達:完全ガイド(はぐくみブログ)』では、幼児期のことばの発達については詳しく・分かりやすく解説しています。ぜひ、お読みください。