先日、当ブログに以下のようなご相談を頂きました。
「やっと単語でお話ができるようになったのですが、「大きい」「小さい」という言葉がなかなか言えるようになりません。保育園の先生からは、「おうちで練習してみてね」と言われるのですが、どうやって練習したらいいのでしょうか?」
こういった質問にこたえる記事を書いてみようと思います。
- 「大小」という語彙の特徴とは?
- 「大小」を理解するための土台となる力
- 「大きい」「小さい」の教え方のコツ

この記事を書いている僕は、言語聴覚士としてことばの発達に心配のあるお子さんを支援しています。
物の名前は言えるけど、「大きい」「小さい」などのことばがなかなか使えるようにならない子がいます。
なんでだろう?って不思議に思いますよね。
実は、「大小」は身の周りの物の名前のような名詞とは異なる難しさがあるんです。
この記事では、まず「大小の概念の特徴」を解説した上で、生活の中で「大きい」「小さい」を教えるコツを紹介します。
「大きい」「小さい」という語彙の特徴、それは抽象的だということ



まず、「大小」の概念の特徴を解説します。
結論からいうと、大小の概念は『抽象的』であるということが最大の特徴です。
抽象概念のはじめの一歩
「大小」は子どもが最初に学ぶ抽象概念となる場合も多いです。
※抽象概念=「物の性質、関係、状態をさす概念」
…ちょっと分かりにくいですね。
要するに、その単語が示す「物」がない語彙です。
例えば、「たいこ」と言えば、丸くて叩くと大きな音のなる楽器として具体的な「物」を思い浮かべることができます。
でも、「大きい」と言われても、大きいという「物」はないですよね。「大きい〇〇」といった物の状態を示すことばです。
その他の抽象概念
「大小」以外にも、抽象的なことばはたくさんあります。
例えば、以下のとおり。
- 長短
- 色
- 形容詞
- 感情語
など。
これらの語彙は、名詞のような具体的な語彙に比べて習得がむずかしいと言われています。
子どもたちは、「身のまわりの物(名詞)→動詞→大小→…」といったように徐々に抽象的な語彙を増やしていきます。
大小は、その最初の一歩となるような概念です。
「大きい」「小さい」を理解するための土台となる力



「大小」の概念の土台。それは、「名詞と動詞の語彙がある程度増えていること」です。
いきなり「大小」は理解できない
繰り返しになりますが、「大小」は抽象概念であり、子どもたちにとって習得が難しめの語彙です。
初期のことばの発達では、具体的な語彙ほど習得されやすいという特徴があります。例えば、「ママ」などのヒトの名前、「ブーブ」などの具体物の名前など。
「大きい」が初めての言葉でしたという赤ちゃんは、、、稀ですよね。
もしかしたら、いるかもしれませんが。
簡単な概念からコツコツ、これが大事
「大小」の概念を理解するためには、簡単な概念からコツコツ積み上げていくことが大切。
・身の周りの物の名前
→簡単な動詞(擬態語が主)
→大小などの抽象概念
これらのそれぞれの段階を、しっかり広げることで、次の段階に進めます。
具体的には、「ママ」が分かるようになったら、「マンマ」「ブーブ」「ボール」などの他の名詞が広がることが大切。「ママ」が分かったからすぐに動詞へ…、と焦りすぎないように、コツコツと積み上げましょう。
「大きい」「小さい」の教え方のコツ



前提として、「大小の概念の特徴」「大小を理解するための土台」を理解していただいたところで、ここからは教え方のコツを紹介していきます。
- ステップ①:あきらかに「大きい」ものを経験
- ステップ②:大小を比較する
- ステップ③:大きさに注目して分類する
- ステップ④:身振りで大小を理解する
順番に説明していきますね。
あきらかに「大きい」ものから、まずは経験
まずは、「うわぁ、おっきい~」といった感動、経験を大切にしましょう。
例えば、動物園でゾウを見る、水族館でシャチを見る、大仏を見に行く…など。子どもが興味をもちやすいものを選んであげてください。
子どもが見ている時に「大きいね!」などと自然に語彙を聞かせるのがコツです。
比較する経験も大切
実際に自分で操作しながら「比較」する経験も大切です。
例えば、大人の靴を履いて「ブカブカで大きい」とか、赤ちゃん用の靴を履こうとして「小さくて入らない」など。
実体験を通しながら「大小」の概念にふれていきましょう。
分類すると理解が深まる
なんとなく“大きさ”という概念に興味が出てきたら、大小を「分類」するのもオススメです。
例えば、2つの箱を用意して「大きい車はこっち」「小さい車はこっち」というように、大小の特徴で分けながらお片づけするなど。
慣れてきたら、車だけではなく色々な大小の分類を経験していけると、概念が深まっていくと思います。
身振りで「大きい」「小さい」を理解
手を大きく広げて「おっきぃ~」、つまむような手つきで「ちっちゃい」など。
言葉だけではなく、「身振り」をつけながら関わってあげるのもオススメ。
なぜなら、子どもたちは、言葉で理解できるようになる前に、身振り・ジェスチャーの理解が広がることが多いからです。
身振りで理解できるようになれば、近い将来に言葉にもつながっていくと思いますので、繰り返しに身振りを使ったやりとりを続けていきましょう。
まとめ:大小の概念は生活の中で育もう



この記事では、「大きい」「小さい」ってどうやって教えるの?といった質問に答える形で解説しました。
ここまでをまとめます。
- 大小の概念は抽象的なので子どもにとっては難しい
- 名詞や動詞などの基礎的な語彙習得が土台になる
- 比較や分類、身振りでの表現から大小を学ぶ
こんな感じです。
大小が理解できるようになると、「大きい、帽子」「小さい、ワンワン」などと2語文にもつながりやすくなります。
それでは、今回はここまで。