
うちの子、なかなか言葉が出なくて心配。身振りやジェスチャーで伝えることは増えてきたけど、このままじゃ言葉を話さなくならないかしら。ことばで話せるようになるために必要な関わりを知りたい。
こういったお悩みにこたえます。
- 身振りやジェスチャーはことばの発達を促す!
- まずは大人がジェスチャーを使って関わろう!
- 子どもが使ったジェスチャーにことばを乗せる



お子さんのことばの発達がゆっくりだとご心配ですよね。どうやって関わってあげたら良いのかと不安に感じることもあるかと思います。
お子さんによっては、ことばで話せるようになる前に、身振りやジェスチャーで気持ちを伝えてくれる時期があります。
実は、この『身振りやジェスチャーで気持ちを伝える』ということが、ことばで話せるようなるためにとても重要なのです。
なぜなら、『相手に伝えたい』という気持ちが育っている証拠であり、いずれ身振りはことばに置き換わっていくものだからです。
実際に、僕ら言語聴覚士は、ことばがまだ出ていないお子さんには、まずは身振り・ジェスチャーでの表現を教えることが多いです。
この記事では、「身振り・ジェスチャーがことばの発達に大切な理由」を解説します。さらに、「日常の中で身振り・ジェスチャーを取り入れるコツ」も紹介します。
読みえると、お子さんのことばの発達を促すために、どのように関わるべきなのかが理解できると思います。
それでは、さっそくお読みください。
目次
ことばの発達に身振り・ジェスチャーが大切な理由



ことばとは、「相手に何かを伝えるための手段」です。
身振りやジェスチャーも、「相手に何かを伝えるための手段」といえます。そして、音声よりも身振り・ジェスチャーの方が子どもたちにとっては簡単なため、ことばより先にできるようになります。
子どもたちは、以下の順番でことばを発達させていきます。
- 泣いてうったえる
- 身振り・ジェスチャーで表現する
- 音声(ことば)で表現する
あかちゃんはまだ相手に伝える手段を持たないので、泣くことで親を読んで、親が子どもが伝えようとしたことを「あれかな?」「これかな?」と察することでコミュニケーションが成立します。
この段階から一歩進んで、指差しなどの身振りが出てくると、子どもが意図をもって相手に表現できるようになります。この変化が、ことばの発達にはとても重要なのです。
では、このような身振り・ジェスチャーはどのように育てていけば良いのでしょうか?
身振り・ジェスチャーを育てるための3つのポイント



身振りやジェスチャーができるようになってきたことは、ことばで話す土台が整ってきたことを意味しています。
ことばで話せるようになるためには、以下のような育ちが必要です。
- 身の回りのものがどういう物かが分かってくる
- 真似する力がついてくる
- 相手に伝えたい気持ちが出てくる
このような力がついてくると、子どもたちはジェスチャーでの意思表出をし始めます。
代表的なジェスチャーは『指差し』です。その他にも、抱っこしてほしい時に両手を広げたり、両手を広げて「ガオー」とライオンの真似をしたりと種類はいろいろです。
以下では、身振りやジェスチャーの育ちに大切な3つのポイントについて、もう少し詳しく説明します。
身の回りのものがとういう物かが分かってくる
ライオンは”物”ではありませんが、ライオンを例に解説します。
ライオンには、「かっこいい」「動物」「大きい」・・・といった概念が含まれていますよね。これらの概念がなんとなく分かってくることが身振りやジェスチャーでの表現が育つためには重要です。
自分が身振りで示そうとしているものが、どういうものなのかが分からないと表現しようがないですからね。
そのため、まずは身の回りの物の認識を深めていくことが、身振りの発達しいては、ことばの発達に重要というわけです。
身の回りの物の認識は、遊びの中で育まれます。一緒に玩具で遊んであげる中で、「ガオー」「おっきいね!」「動物さん、いっぱい」など、やりとりを楽しんであげてください。
真似する力がついてくる
大人がやっている動作を真似する力がついてくることも、身振りやジェスチャーの発達には大切です。
なぜなら、子どもたちは大人がやっていることを真似しながら色々なことを学びます。
身振りやジェスチャーも同じです。大人がやっている身振りを見て、真似しながら覚えていきます。
余談ですが、大人が子どもと関わる時に、自然と動きを誇張して身振りを多用することが知られています。モーショニーズとよばれることもありますが、これは別の機会に解説したいと思います。
要するに、生活の中で身振りやジェスチャーを大人がたくさん使って関わってあげる中で、子どもが大人の身振りを見て、学んでいきます。そのためのベースの力として、真似する力がついてくることが必要です。
相手に伝えたい気持ちがついてくる
相手に自分の気持ちを伝えたいという気持ちが育つことはとても大切です。
上記のような身振りやジェスチャーで表現するための土台の力が育っても、この『伝えたい気持ち』が育っていないと子どもたちは表現しようとはしないですよね。
相手に伝えたい気持ちを育てるには、日ごろから自分の気持ちを察してもらって理解してもらえた経験も大切です。
不快で泣いたらオムツを変えてくれた、不機嫌にしていたら食事を用意してくれた。こういった日常のお世話の中のやりとりが『伝わった!』という経験の積み重ねとなります。
相手に伝わったという気持ちは、『また伝えたい』という気持ちを育てます。以下の記事でも解説していますので、お読みください。
>>【ことばの発達の3つの側面】を読む
身振り・ジェスチャーに関する疑問



でも、身振りやジェスチャーが大切!という話をしていると、以下のようなことを心配される人もいるのではないでしょうか?



ジェスチャーばかりやっていたら、ことばを話さなくなるんじゃないの?
このようなご質問はよく頂きます。
結論からいうと、ジェスチャーはことばの発達にメリットが多く、ジェスチャーはことばの発達に有利に働くであろうことが研究によっても明らかになってきています。
子どもたちは、ことばを話す前にジェスチャーで表現できることが増えますが、ことばで話せるようになるとジェスチャーの使用が減少することが研究結果から明らかになっています。
これは、ジェスチャーで表現するよりも、ことばで表現する方が子どもたちにとって便利だからでしょう。
ことばにはジェスチャーに比べると以下のようなメリットがあります。
- 離れている人にも伝えることができる
- 相手が自分を見ていなくても伝えられる
- 手がふさがっていても伝えることができる
これらはコミュニケーションを円滑にするためには、とても重要ですよね。
たとえば、ことばで話せない子は、おもちゃで遊んでいてうまくいかない時に、『おもちゃをママのいるところへ持って行き、おもちゃをどこかに置いてからジェスチャーで伝える』というようにしなくてはいけません。
でも、ことばなら「ママ―!できないー!」と言えば、ママが来てくれて、助けてくれるでしょう。
子どもたちは、便利な方法を身につければ、そちらへ能力をシフトしていくことが多いです。私たち大人も同じですよね。



むしろ、ジェスチャーをたくさん使って関わってあげた方が、ことばの発達には有利です!
身振り・ジェスチャーを使用した関わりのコツ






具体的にはどうすればいいの?
子どもに、「ほら、ジェスチャーして」といってもしてくれるわけではないし・・・
ことばの発達にメリットの多いジェスチャーですが、日常の中で取り入れるには、以下の2つのポイントを意識してほしいと思います。
- 大人が身振り・ジェスチャーを使って関わる
- 子どもが使用したジェスチャーにことばを添える
大人が身振り・ジェスチャーを使って関わる
子どもがジェスチャーを覚えるためには、周囲の大人たちがジェスチャーを使って関わってあげることが必要です。
“両手を合わせて”「いただきます」、“両手を広げて”「ひこうき」など、最初は簡単なジェスチャーから大人がつかってみてください。
語いが増えてくると、「この単語はどうやってジェスチャーとして表現しようか」と迷うことも出てくると思います。
また、同じ単語でも、パパとママが違ったジェスチャーで表現すると混乱してしまう子もいるかもしれません。
そういった時には、手話やサイン言語が参考になります。
いくつか書籍も出ているので、お子さんが使いやすいものを選んであげてください。
例えば「新・新装版 わかる! できる! おやこ手話じてん」は分かりやすいように思います。
お子さんが自分でジェスチャーを編み出した場合には、最初は子ども独自のジェスチャーを採用してあげてください。
表現できるジェスチャーが増えてきたら、少しずつ、家族以外にも分かるような一般的なジェスチャーに誘導してあげるのも良いでしょう。
子どもがつかったジェスチャーにことばを添える
子どもがジェスチャーをつかって表現できるようになってきたら、次のことばで話すことにつなげていくための関わりが重要です。
子どもが表現したジェスチャーの意味を、ことばにして言って聞かせてあげてください。
たとえば、子どもが両手を広げていたら、「おっ!飛行機だね!かっこいい!」といった具合に。
自分のジェスチャーが伝わったという喜びがコミュニケーションの意欲となり、大人が言ってくれたことばと自分の伝えたかったことが結びついて、「ひこうき」ということばを学んでいきます。



ジェスチャーをたくさん使いながら、ことばでも言って聞かせてあげてください
まとめ:ジェスチャーはことばを育てる!



ジェスチャーの使用は、コミュニケーションの意欲を育て、結果的にことばの発達を促すことを分かっていただけたでしょうか?
ここまでをまとめます。
- 身振りやジェスチャーはことばの発達の土台になる
- 身振り・ジェスチャーの発達には、①物の概念、②真似する力、③伝えたい気持ちの育ちが大切
- 大人が身振りを使って子どもと関わろう
- 子どもが使った身振りにことばを添えよう
と、こんな感じですかね。
身振りやジェスチャーはことばが出てくる前のお子さんにとって、大切な意思伝達の方法です。
そして、ジェスチャーを通したやりとりの中で、コミュニケーションの楽しさを感じ、もっともっと相手と関わりたいという気持ちを育てます。
この気持ちこそが、ことばの発達にとても重要なことだと思っています。



ぜひ、お子さんとジェスチャーを交えたコミュニケーションを楽しんでください!
この時期のお子さんは、遊びの中でいろいろなことを学びます。ただ遊んでいるようでも、いろんなことを考えながら遊んでいるわけですね。