
子どものことばを育てる時に、会話のキャッチボールが大切といわれるけど、何を大切にして子どもに関わったらいいんだろう?
こういった疑問にこたえます。
会話のキャッチボールは子どものことばを育てるために大切です。
しかし、ただ話しかければ良いのでしょうか?
本記事では、会話のキャッチボールで子どものことばを発達させるために大切なことを解説します。



私は15年以上、言語聴覚士という資格で、主に発達に遅れや偏りのある子どもたちへの言語・コミュニケーション支援を行っています。その経験と知識から、会話のキャッチボールについて解説します。
以下の3つのポイントが、会話のキャッチボールで大切にしてほしい大人の姿勢です。
- 子どもが投げたボールを一生懸命に追いかける
- 子どもがキャッチしやすいボールを投げる
- 内容はともあれキャッチボール自体を楽しむ
それでは、それぞれを解説していきましょう。
目次
子どもが投げたボールを一生懸命に追いかける



会話のキャッチボールに関して、子どもは初心者です。
初心者ゆえに、ボールをまだ上手くなげられないこともあるかと思います。
例えば、以下のようなことがあるかもしれません。
- 投げる力が弱くてボールが相手に届かない
- コントロールが悪くてボールが違う方向に飛んでいく
- 相手が構える前にボールを投げてしまう
これらを会話に言い換えると
- ボールが届かない:表現力が未熟
- コントロールが悪い:話題が逸れる
- 構える前に投げる:一方的
といえるかもしれません。
表現力が未熟であなたのもとにボールが届かないのであれば、ボールが届く位置まであなたが近づいてあげればいい。
コントロールが悪くてあなたのもとにボールが届かないのであれば、逸れたボールを何度でも追いかけてキャッチしてあげればいい。
構える前に投げてしまってあなたがとれないのであれば、とれなかったボールを追いかけて投げ返せばいい。
会話のキャッチボールは、子どもが投げたボールがどんなボールであっても、あなたがキャッチさえすれば継続します。
本物のボールを使ったキャッチボールなら、上記のように何度でも追いかけて子どもが上達するのを待ってあげるはずです。
会話のキャッチボールも同じ。
何度でも子どもの投げたボールをキャッチして、投げ返してあげる関わりが、子どもの投げる力(表現力)を上達させます。
子どもがキャッチしやすいボールを投げる



子どもが投げることだけでなく、キャッチすることに関しても初心者です。
本物のボールを使ったキャッチボールなら、大人側がいきなりピッチャーみたいなフォームで剛速球を子どもに投げたりはしませんよね。
会話のキャッチボールも同じ。
子どもがとりやすい(理解しやすい)場所に、下手投げでふわぁっと投げてあげることが大切です。
具体的には、お子さんのことばの理解力に合わせて、子どもが知っていそうな語いで、理解できるくらいの長さの文で声かけをしてあげましょう。
ことばの理解があいまいな発達の段階であれば、擬音語・擬態語やジェスチャーなども交えながら。
大切なのは、あなたの伝えたいことがお子さんに届くことです。
伝えたいことが届くためであれば、なにもことばにこだわることはない。
子どもがあなたの投げたボールをキャッチできた喜びを経験させてあげましょう。
なんどもキャッチしているうちに、少しずつ上達して、色々なボールがキャッチ(理解)できるようになっていきます。
内容はともあれキャッチボール自体を楽しむ



もっとも大切なのは、「キャッチボール自体を楽しむ」ということではないでしょうか。
投げるのが楽しい!キャッチできてうれしい!といった気持ちを育てることが大切です。
そして、あなたとキャッチボールを楽しみたいといった気持ちが、コミュニケーションの発達を後押ししてくれます。
子どもの投げたボールが逸れたらおおげさに走って追いかけてあげる(=子どもの発話に大きなリアクションで応えてあげる)。
子どもがキャッチできたらこれでもかと褒めてあげる(=あなたの話を聞いてくれた子どもに感謝を伝える)。
このようなやりとりの中で、『キャッチボールが楽しい!』『キャッチボールをまたやりたい!』と思ってもらうことが何よりも大切なことだと思います。
会話のキャッチボールで大切にしてほしいことを解説しました。
- 子どもが投げたボールを一生懸命に追いかける
- 子どもがキャッチしやすいボールを投げる
- 内容はともあれキャッチボール自体を楽しむ
すなわち、
- 子どもの言ったことを受け止める努力をする
- 子どもが理解しやすい声かけをする
- 会話を楽しむ・楽しませる
この3つのポイントを大切に、子どもとのやりとりを楽しんでいるうちに、自然とことばの発達も促されていくと思います。